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世界にスマイル ☆14(最終回)☆ [世界にスマイル]

☆14(最終回)☆
文化祭が始まった。
にぎやかな模擬店や衣装、学校中が華やいでいる。
そして、視聴覚室では、ぼくらの作った映画、
『山口探検隊、恐怖の宝島探検』の上映が始まった。
視聴覚室は満員で、黒い暗幕のカーテンが閉められた部屋は、
生徒の熱気でムンムンだった。

映写機がモーターが音を立てて周り、スクリーンに光が映る。
光が色彩を帯びて動き出す。
美しい海のシーンから、映画が始まった。
そこに浮かぶのは、如何にも模型らしい船。
観客がくすっと笑う。

船の中の隊員のやり取りは、断続的に観客の笑いに包まれる。
船から投げされアイコが、隊員達を倒すために怪物と化したシーンでは、
一際大きな歓声があがる。

島に上陸した隊員達は次々とアイコに殺される。
「副隊長も怪物に倒された。」とナレーションが入り、
地面に転がったヤジューのカゥボーイハットが映る。
そして、アイコと生き残ったぼくとの最後の戦いが始まる。

前日の雨で、ぬかるんだ川原に作られた
カオリとユーコが段ボールで作った洞窟のセットの前で、
アイコとぼくが向かい合って立つ。
二人とも、じっとお互いを見つめている。

突然、アイコはぼくを、どんと突き飛ばす。
そして、「あんたなんか。」と言う。
さらに、「あんたなんか、あんたなんか」と続けて、
ぼくの胸をこぶしでバンバンとたたく。

ぼくが、アイコの手を振り払う。
取っ組み合いとなった。熾烈な戦いだ。

観客は、うひょーと喜び、ヤンヤの歓声を上げる。

二人とも服も、顔もドロドロになって、
倒れても起き上がり、叩き合う。

突然、アイコがぼくにしがみ付いて泣きじゃくり始めた。
そして、ぼくの耳元で何かをささやく。
ぼくは、アイコをしっかりと抱きしめる。
アイコとぼくはしっかりと抱き合う。
二人の顔には、涙が溢れている。

場内が静まる。

ここでロッキーのテーマがかかり、
ベン君の声でナレーションが流れる。
~現代社会にとり残された、神秘の南の島。
そこには、二人のアマゾネスが、今も生き残っているという。~
完。

部屋は、弾けるような笑い声で包まれた。
暗幕のカーテンが開けられ、まぶしい光が部屋に差し込む。
ぼくは後ろを振り返り、映写機の横のクロウとベン君を見る。
ベン君がぼくに目配せをし、ぼくはVサインをする。
映画がうけて嬉しそうなクロウが、
「また、映画作ろうな」とぼくに言った。
「ちょっと、考えとく。」と言って、
ぼくは、世界にスマイルをした。


エッシャーとプラナリア [美術]

エッシャーの絵は不思議である。
この不思議な絵の一つに扁平虫類(Flatworms)という作品がある。

平べったい、矢印の様な虫が、
正四面体と正八面体が織り成す不思議な世界を泳ぎ回っている絵である。

http://www.mcescher.com/ のpicture Gallery 1955-1972に収録の
『Flatworms 1959 Lithograph』を見ると小さいけど絵が確認できます。)

この絵の中の平べったい、矢印の様な虫は、
プラナリアという変な生き物ではないかと思う。

プラナリアはとても不思議な生態を持つ生き物である。
『切っても切ってもプラナリア』(岩波)という本では、
2つに切ると、2匹に分かれるということが、紹介されている。
頭部と尾部に分けると、それぞれが固体となるし、
左右に分けても、それぞれが固体となるらしい。

何だか、エッシャーのテーマである対称性や無限分割を、
具現した様な生き物である。
エッシャーが絵に使ったのは、形に惹かれただけなのか、
それともプラナリアの生態を知っていたのだろうか?

プラナリアの写真は、以下にあります。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~gen-yu/planaria.html
(可愛いい。)
http://www.t3.rim.or.jp/~hylas/planaria/index.html

『へんないきもの』というチョット前に流行った本にも
プラナリアはのっていたと思う。

なお、美術手帖の11月号は、M.C.エッシャーの特集でした。

切っても切ってもプラナリア

切っても切ってもプラナリア

  • 作者: 阿形 清和, 土橋 とし子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1996/12
  • メディア: 大型本


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世界にスマイル ☆13☆ [世界にスマイル]

☆13☆
家に帰ると、クロウから電話があった。
「今日は、映画一緒に行けなくて、ごめんな。
どうしても、行かなきゃならない所があって。」
「アイコと一緒だったの?」とぼくは率直に聞いた。
「うん、一緒に買い物に行こうと誘われて。」
とクロウは言いにくそうに答えた。そして、クロウは続けた。
「俺、アイコに付き合ってと言われたけど、断ったから。」
「じゃぁ今度は、映画一緒に行ってくれる?」とぼくは聞いた。
「うん。今度は、断らないから。」とクロウは答えた。
「ありがとう」とぼくは心から言った。

次の日は雨だった。
朝一番に、クロウから電話があった。
「大変だ!
 昨日、ヤジューがスクーターで転んで、入院したらしいんだ。」
驚いてぼくは聞いた。「大丈夫なの?」
「足の骨を折ったらしい。他は大丈夫らしい。これから、見舞いに行く。」
ぼくも一緒に見舞いに行くことにした。

雨の中傘をさして、病院に行くと、
ヤジューは、包帯でぐるぐる巻きの足を吊り下げて、
ベッドに寝ていた。元気そうだった。
「処置が早かったんだ。オレ、この病院の前でコケたから。
すぐ、病院に運ばれたんだ。」とヤジューは笑った。
「オレ、副隊長の死ぬ場面、最高にリアルなものにしようと
考えながらスクーター乗っていたら、危うく、本当に死ぬ所だったぜ。
ヤバかった。で、撮影どうするんだ?」
「撮影のことは、気にするな。いい考えがある。
ミッキーを復活させる。」とクロウが言った。
「え!」と、ヤジューとぼくは叫んだ。
「ミッキーの最期のシーンをカットすればいいんだ。
そうすれば、ミッキーは復活する。」
「クロウちゃん、オレの死ぬ場面はどうなるんだ?」
とヤジューが心配そうに聞いた。
「せっかく命拾いしたんだ。 早く元気になれよ。」
とクロウは言った。
「世界に認められるまでは、俺は死なないよ。」
 とヤジューは答えた。

病室を出て、緑色のリノリウムでできた病院の階段を降りながら、
ぼくはクロウに言った。
「明日、アイコと戦うのは、気が進まない。」
「映画は、生き物なんだよ。
 きっと、ミッキーとアイコが戦うということは宿命なんだ。
 健闘を祈る。」
「戦えないよ。」
「おまじないをかけよう。」
クロウは、ぼくのを肩を抱いて、軽くキスをした。


世界にスマイル ☆12☆ [世界にスマイル]

☆12☆
翌日、ぼくはベン君と、ウディアレンの『カメレオンマン』を見に行った。
この渋い選択は、ベン君によるもので、
その日ちょっと落ち込んでいた僕にも、この映画はかなり面白かった。
「みんなと同じになって好かれたい」あまりに、
周りの人に同化してしまう、カメレオンマン。
ジャズエイジの寓話。
冒頭、この特異体質の男は、
フィッツジェラルドにより発見されたことが紹介される。
ロング・アイランドの邸宅で、
ゼリックは、金持ち仲間といる時は、紳士姿で共和党支持、
厨房で話を合わせるときは、労働者の格好となり、民主党を支持する。
同一人物とは思えない、と驚くフィッツジェラルド。
その後、様々な歴史上の珍事を繰り広げるが、
精神科女医の献身的な愛により、回復してく物語。
(精神科女医役をウディアレンの当時のパートナー、ミス・ファローが好演。
華麗なるギャツビーにも出ていたっけ。)

挿入曲のカメレオン・デイズを口ずさんでから、
「そういえば、『白鯨』のエピソードが出てきたね」
とぼくはベン君に言った。
「うん。この間、君は白鯨を読んだことないって、
はっきり答えたから、カメレオンマンには、ならなくて済むね。」
とベン君は言った。
「そうかもね。」とぼく答え、
「でも、カメレオンマンになってしまうゼリックの弱さも、
 好きだよ。」と付け加えた。

映画を見てから、ピザを食べて、公園を散歩した。
そして、ベンチに座った。
鳩が噴水の周りを餌を探して歩いていた。
ベン君が、ぼくを見て言った。

「当然で、びっくりすると思うけど、聞いて欲しい。」
僕はベン君の目を見た。息を止めてから、ベン君は言った。
「僕は、君のことが好きです。
君の考え方や、感じ方が好きです。
どうか、僕と付き合って欲しい。」
ぼくの体中の血液がドクンと音を立てる。
世界が止まり、鳩の飛ぶ姿も一時停止する。
回らない頭で、ぼくは喉に詰まろうとする言葉を出す。
「ベン君のことは好きだけど、今は他に好きな人がいる。
 彼女にはなれない。 でも、いい友達にはなれると思う。本当の意味で。」
ベン君の顔は、見ることができなかった。

しばらくして、ベン君は、静かな声でぼくに言った。
「さしつかえが無ければ、教えて欲しい。
 クロウのことが好きなんだね。」
 僕はゆっくりと頷いた。一瞬、アイコと一緒のクロウの姿が頭に浮かんだ。
そして、
「また、いつか機会があったら、なにか一緒に、作品を作ってくれる?」
とぼくは、言った。
「うん。いつか。素敵な恋愛コメディでも。」
とベン君は悲しそうな笑い顔で答えた。


世界にスマイル ☆11☆ [世界にスマイル]

☆11☆
その後も、撮影は順調に続いた。
教室でのアイコとヤジューのやり取りを取り終え、
学校の側のタキ川での川原の撮影が続いた。

アイコは、頭に鬼のように角を2本つけた怪物に扮し、
隊員A~Dを次々とジャングルに誘い込んで、殺害する。
例えば隊員Dの殺害シーンは、こんな感じである。

隊員D「あ!隊長!」
山口隊長は、隊員Dの額に人指し指を立てながら言う。
山口隊長「私は、もう隊長じゃないわ。
     頭だってこんなになってしまって。
     今、あなたの経絡秘孔の一つを突いたわ。
     お前はもう死んでいる。」
隊員D「あぷぱ!」(といって倒れる)

自分の考えたセリフながら、
『北斗の拳』そのままのひどい会話である。

残る隊員は、副隊長と隊員見習い(ぼく)。
そして次は、隊員見習い(ぼく)の最期のシーン。

ぼくにはセリフが無い。
毒リンゴで殺害される。
山口隊長がこっそりとぼくの前に毒リンゴを転がす。
ぼくは、左右をきょろきょろ眺めて、不思議そうにリンゴを拾う。
そして、一口がりっとかじって、よろけて倒れる。
セリフが無いことを喜んでいたが、
かえって演技力が必要で、クロウから中々O.K..が出なかったが、
なんとかやり終えた。

残すは、最後のヤジューとアイコの対決。
アイコはクロウと色々と打ち合わせをしていた。
最後の撮影はヤジューのサッカー部の試合の都合で、
3日後となった。

「明日、ひさしぶりに映画見に行かない?」
と、ぼくは帰りにクロウに言った。
「悪い。オレ、明日でかける用事あるんだ。」
と、気まずそうにクロウが答えた。
「じゃぁ、僕と行かない?」
振り返ると、ベン君だった。
「ベン君さえ、よければ。」と、ぼくはベン君を見て答えた。

クロウは、すたすたと大股で歩いて行った。
そのクロウの後を、アイコがついていった。
その瞬間、クロウは、ぼくとは別方向に向かってしまっていた
ことに気がついた。
これは、ぼくにとっては、かなり辛いことだった。


「うおいか」号の悲劇 [村上春樹]

先日、帆船が近くの港にやってきたので見に行きました。
カッコ良くて、ちょっと興奮しました。
 


この船の名前は、果たして「うおいか」なのだろうか?
頭の中に、魚イカなる、不思議なイカが浮かんできて、
むずむずしてしまう。

『村上朝日堂の逆襲』には、「うゆりずく」号の悲劇、という話が載っています。
車や船舶における右側面表記が、左右逆転していることについて、
気になってしょうがないという様な内容が書かれています。
(進行方向に沿って文字を並べようとするため、こうした書き方をするらしい。)
「海王」も「九頭竜」も、かたなしである。

そういえば、今週カフカ賞の表彰式のニュースで、動く村上春樹さんをはじめて見た。
最近拝見する写真のお姿は、ふけてきたかな(失礼)と思っていたけど、
動いている姿は、めちゃくちゃ若々しい。
鍛えている感じで(足元もばっちりだし)、スピーチも力強くて、かっこ良かったです。
なお、関係ないけど、『村上朝日堂の逆襲』の表紙は『レイダース』のパロディで、
鞭を振り回すインディ扮したハルキさんの姿のイラスト(by水丸画伯)です。

今週、また『レイダース』を見返して、レイダース・マーチを口ずさんでいる今日この頃。


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