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世界にスマイルの目次、最近読んだ本、そして月に行く [世界にスマイル]

ブログに連載した『世界にスマイル』を読もうとして、"世界にスマイル"のカテゴリーをクリックすると、新しい話の順番に並んでしまい、第1回から読もうとすると、下から順番に読まなくてはならないので、目次を作りました。
(逆さまに読んでも意味が通じる回文ならぬ回小説なら良かったんですが)

世界にスマイル ☆1☆ ☆2☆ 
世界にスマイル ☆3☆ 
世界にスマイル ☆4☆ 
世界にスマイル ☆5☆ 
世界にスマイル ☆6☆ 
世界にスマイル ☆7☆ 
世界にスマイル ☆8☆ 
世界にスマイル ☆9☆ 
世界にスマイル ☆10☆ 
世界にスマイル ☆11☆ 
世界にスマイル ☆12☆ 
世界にスマイル ☆13☆ 
世界にスマイル ☆14(最終回)☆ 

最近読んだ本、
☆グレート・ギャツビー
 今の小説みたいに新しく感じた。とっても良かった。
 オールド・スポートは口癖になりそうだ。
 翻訳ライブラリー版の61頁の
 ”少し前に顔をあたったらしく、頬骨のところに石鹸の白い泡が小さく残っていた。”
 という所で、10秒ぐらい悩んだんですが、"あたった"ではなく、"あらった"ですね。多分。
 キーボードのRとTが横に並んでいるので、打ち間違えたんでしょうね。
 ひらがなを使いたかったのだろうなとか、スペルチェックでは、単語としてはあっているので、
 ひっかからなかったんだろうなとかとか、さらに30秒ぐらい考えてしまった。
 (とかいう私の文章は恥ずかしい程、誤字があります。)
 追記; おもいっきり、バカなことを書いて、やっぱり、恥をかいていました。
      詳細は、コメント参照! sknysさんに感謝。
 
☆アメリカの鱒釣り
 柴田元幸さんの『翻訳教室』を読んでいたら、ブローティガンの文章が載っていて、
 感性にフィットしたので、買って読んだ。すごく面白かった。
 実は大学時代に、大学の側の古本屋で、『ジャック・ロンドン自伝的物語』と
 2冊並んで置いてあり、まずは、ジャックを買って、次に買おうと思っている内に
 無くなった想い出がある。古き良きヒッピー、ナンセンス、深い哀愁、そしてマヨネーズ。

☆東京タワー オカンとボクと、時々、オトン
 やっと読んだぞ。名作だ!
 
今読みかけの本
☆ブラッカムの爆撃機(宮崎駿さんの絵がいいですね。新作動き出してますね。)
☆ソロモンの指環 
 (ジャック・ロンドンの荒野の呼び声は動物学的に正しかったんだと関心した。)

ところで、
宇宙航空研究開発機構(JAXA)で、月周回衛星SELENE(セレーネ)にのせて月へ送る
「名前」と「メッセージ」を募集している。
http://www.jaxa.jp/pr/event/selene/index_j.html

今朝、『世界にスマイル』というメッセージを送った。
来年の秋には月を見上げてスマイルすることだろう。


世界にスマイル ☆14(最終回)☆ [世界にスマイル]

☆14(最終回)☆
文化祭が始まった。
にぎやかな模擬店や衣装、学校中が華やいでいる。
そして、視聴覚室では、ぼくらの作った映画、
『山口探検隊、恐怖の宝島探検』の上映が始まった。
視聴覚室は満員で、黒い暗幕のカーテンが閉められた部屋は、
生徒の熱気でムンムンだった。

映写機がモーターが音を立てて周り、スクリーンに光が映る。
光が色彩を帯びて動き出す。
美しい海のシーンから、映画が始まった。
そこに浮かぶのは、如何にも模型らしい船。
観客がくすっと笑う。

船の中の隊員のやり取りは、断続的に観客の笑いに包まれる。
船から投げされアイコが、隊員達を倒すために怪物と化したシーンでは、
一際大きな歓声があがる。

島に上陸した隊員達は次々とアイコに殺される。
「副隊長も怪物に倒された。」とナレーションが入り、
地面に転がったヤジューのカゥボーイハットが映る。
そして、アイコと生き残ったぼくとの最後の戦いが始まる。

前日の雨で、ぬかるんだ川原に作られた
カオリとユーコが段ボールで作った洞窟のセットの前で、
アイコとぼくが向かい合って立つ。
二人とも、じっとお互いを見つめている。

突然、アイコはぼくを、どんと突き飛ばす。
そして、「あんたなんか。」と言う。
さらに、「あんたなんか、あんたなんか」と続けて、
ぼくの胸をこぶしでバンバンとたたく。

ぼくが、アイコの手を振り払う。
取っ組み合いとなった。熾烈な戦いだ。

観客は、うひょーと喜び、ヤンヤの歓声を上げる。

二人とも服も、顔もドロドロになって、
倒れても起き上がり、叩き合う。

突然、アイコがぼくにしがみ付いて泣きじゃくり始めた。
そして、ぼくの耳元で何かをささやく。
ぼくは、アイコをしっかりと抱きしめる。
アイコとぼくはしっかりと抱き合う。
二人の顔には、涙が溢れている。

場内が静まる。

ここでロッキーのテーマがかかり、
ベン君の声でナレーションが流れる。
~現代社会にとり残された、神秘の南の島。
そこには、二人のアマゾネスが、今も生き残っているという。~
完。

部屋は、弾けるような笑い声で包まれた。
暗幕のカーテンが開けられ、まぶしい光が部屋に差し込む。
ぼくは後ろを振り返り、映写機の横のクロウとベン君を見る。
ベン君がぼくに目配せをし、ぼくはVサインをする。
映画がうけて嬉しそうなクロウが、
「また、映画作ろうな」とぼくに言った。
「ちょっと、考えとく。」と言って、
ぼくは、世界にスマイルをした。


世界にスマイル ☆13☆ [世界にスマイル]

☆13☆
家に帰ると、クロウから電話があった。
「今日は、映画一緒に行けなくて、ごめんな。
どうしても、行かなきゃならない所があって。」
「アイコと一緒だったの?」とぼくは率直に聞いた。
「うん、一緒に買い物に行こうと誘われて。」
とクロウは言いにくそうに答えた。そして、クロウは続けた。
「俺、アイコに付き合ってと言われたけど、断ったから。」
「じゃぁ今度は、映画一緒に行ってくれる?」とぼくは聞いた。
「うん。今度は、断らないから。」とクロウは答えた。
「ありがとう」とぼくは心から言った。

次の日は雨だった。
朝一番に、クロウから電話があった。
「大変だ!
 昨日、ヤジューがスクーターで転んで、入院したらしいんだ。」
驚いてぼくは聞いた。「大丈夫なの?」
「足の骨を折ったらしい。他は大丈夫らしい。これから、見舞いに行く。」
ぼくも一緒に見舞いに行くことにした。

雨の中傘をさして、病院に行くと、
ヤジューは、包帯でぐるぐる巻きの足を吊り下げて、
ベッドに寝ていた。元気そうだった。
「処置が早かったんだ。オレ、この病院の前でコケたから。
すぐ、病院に運ばれたんだ。」とヤジューは笑った。
「オレ、副隊長の死ぬ場面、最高にリアルなものにしようと
考えながらスクーター乗っていたら、危うく、本当に死ぬ所だったぜ。
ヤバかった。で、撮影どうするんだ?」
「撮影のことは、気にするな。いい考えがある。
ミッキーを復活させる。」とクロウが言った。
「え!」と、ヤジューとぼくは叫んだ。
「ミッキーの最期のシーンをカットすればいいんだ。
そうすれば、ミッキーは復活する。」
「クロウちゃん、オレの死ぬ場面はどうなるんだ?」
とヤジューが心配そうに聞いた。
「せっかく命拾いしたんだ。 早く元気になれよ。」
とクロウは言った。
「世界に認められるまでは、俺は死なないよ。」
 とヤジューは答えた。

病室を出て、緑色のリノリウムでできた病院の階段を降りながら、
ぼくはクロウに言った。
「明日、アイコと戦うのは、気が進まない。」
「映画は、生き物なんだよ。
 きっと、ミッキーとアイコが戦うということは宿命なんだ。
 健闘を祈る。」
「戦えないよ。」
「おまじないをかけよう。」
クロウは、ぼくのを肩を抱いて、軽くキスをした。


世界にスマイル ☆12☆ [世界にスマイル]

☆12☆
翌日、ぼくはベン君と、ウディアレンの『カメレオンマン』を見に行った。
この渋い選択は、ベン君によるもので、
その日ちょっと落ち込んでいた僕にも、この映画はかなり面白かった。
「みんなと同じになって好かれたい」あまりに、
周りの人に同化してしまう、カメレオンマン。
ジャズエイジの寓話。
冒頭、この特異体質の男は、
フィッツジェラルドにより発見されたことが紹介される。
ロング・アイランドの邸宅で、
ゼリックは、金持ち仲間といる時は、紳士姿で共和党支持、
厨房で話を合わせるときは、労働者の格好となり、民主党を支持する。
同一人物とは思えない、と驚くフィッツジェラルド。
その後、様々な歴史上の珍事を繰り広げるが、
精神科女医の献身的な愛により、回復してく物語。
(精神科女医役をウディアレンの当時のパートナー、ミス・ファローが好演。
華麗なるギャツビーにも出ていたっけ。)

挿入曲のカメレオン・デイズを口ずさんでから、
「そういえば、『白鯨』のエピソードが出てきたね」
とぼくはベン君に言った。
「うん。この間、君は白鯨を読んだことないって、
はっきり答えたから、カメレオンマンには、ならなくて済むね。」
とベン君は言った。
「そうかもね。」とぼく答え、
「でも、カメレオンマンになってしまうゼリックの弱さも、
 好きだよ。」と付け加えた。

映画を見てから、ピザを食べて、公園を散歩した。
そして、ベンチに座った。
鳩が噴水の周りを餌を探して歩いていた。
ベン君が、ぼくを見て言った。

「当然で、びっくりすると思うけど、聞いて欲しい。」
僕はベン君の目を見た。息を止めてから、ベン君は言った。
「僕は、君のことが好きです。
君の考え方や、感じ方が好きです。
どうか、僕と付き合って欲しい。」
ぼくの体中の血液がドクンと音を立てる。
世界が止まり、鳩の飛ぶ姿も一時停止する。
回らない頭で、ぼくは喉に詰まろうとする言葉を出す。
「ベン君のことは好きだけど、今は他に好きな人がいる。
 彼女にはなれない。 でも、いい友達にはなれると思う。本当の意味で。」
ベン君の顔は、見ることができなかった。

しばらくして、ベン君は、静かな声でぼくに言った。
「さしつかえが無ければ、教えて欲しい。
 クロウのことが好きなんだね。」
 僕はゆっくりと頷いた。一瞬、アイコと一緒のクロウの姿が頭に浮かんだ。
そして、
「また、いつか機会があったら、なにか一緒に、作品を作ってくれる?」
とぼくは、言った。
「うん。いつか。素敵な恋愛コメディでも。」
とベン君は悲しそうな笑い顔で答えた。


世界にスマイル ☆11☆ [世界にスマイル]

☆11☆
その後も、撮影は順調に続いた。
教室でのアイコとヤジューのやり取りを取り終え、
学校の側のタキ川での川原の撮影が続いた。

アイコは、頭に鬼のように角を2本つけた怪物に扮し、
隊員A~Dを次々とジャングルに誘い込んで、殺害する。
例えば隊員Dの殺害シーンは、こんな感じである。

隊員D「あ!隊長!」
山口隊長は、隊員Dの額に人指し指を立てながら言う。
山口隊長「私は、もう隊長じゃないわ。
     頭だってこんなになってしまって。
     今、あなたの経絡秘孔の一つを突いたわ。
     お前はもう死んでいる。」
隊員D「あぷぱ!」(といって倒れる)

自分の考えたセリフながら、
『北斗の拳』そのままのひどい会話である。

残る隊員は、副隊長と隊員見習い(ぼく)。
そして次は、隊員見習い(ぼく)の最期のシーン。

ぼくにはセリフが無い。
毒リンゴで殺害される。
山口隊長がこっそりとぼくの前に毒リンゴを転がす。
ぼくは、左右をきょろきょろ眺めて、不思議そうにリンゴを拾う。
そして、一口がりっとかじって、よろけて倒れる。
セリフが無いことを喜んでいたが、
かえって演技力が必要で、クロウから中々O.K..が出なかったが、
なんとかやり終えた。

残すは、最後のヤジューとアイコの対決。
アイコはクロウと色々と打ち合わせをしていた。
最後の撮影はヤジューのサッカー部の試合の都合で、
3日後となった。

「明日、ひさしぶりに映画見に行かない?」
と、ぼくは帰りにクロウに言った。
「悪い。オレ、明日でかける用事あるんだ。」
と、気まずそうにクロウが答えた。
「じゃぁ、僕と行かない?」
振り返ると、ベン君だった。
「ベン君さえ、よければ。」と、ぼくはベン君を見て答えた。

クロウは、すたすたと大股で歩いて行った。
そのクロウの後を、アイコがついていった。
その瞬間、クロウは、ぼくとは別方向に向かってしまっていた
ことに気がついた。
これは、ぼくにとっては、かなり辛いことだった。


世界にスマイル ☆10☆ [世界にスマイル]

☆10☆
海に行く日は、暑い日となった。
撮影隊メンバーが、駅に集まる。

アイコは可愛い水色のワンピース。
カオリは青いTシャツでビーチボールや浮き輪を持ってきた。
タミヤンは、大きな袋を抱えていた。
中に模型の帆船が入っている。
青いつなぎにカゥボーイハットをかぶったヤジューは、
でかいSONYのラジカセを持ってきていた。
「ヤジュー、おはよう。そのラジカセなに?」
「ははは。海で音楽をガンガン聴きたいだろ。」とヤジュー。
「聖子とか明菜とかは?」とアイコが聞く。
「悪い。もってない。邦楽は、ナイアガラ・トライアングルかサザンぐらいかな。」
と、袋から、カセットを取り出して、ヤジューは言った。

クロウとマゴベーは、撮影用のカメラや三脚を持ってきた。
隊員A~D役の男の子もやってきて、少し遅れて本を片手にベン君が来た。
本は、メルヴィルの『白鯨』だった。
「この本、読んだことある?」とベン君が言った。
「ううん。読んだこと無い。でもこの話、映画であるよね。」
「ジョーズなら観た事あるよ。」
「ははは。ぼくが言っているのはもっと古い映画なんだけど。」
「ミッキーは古い映画良く知っているね。」
「キネ旬のおかげかな。」とぼくは答えた。

電車の中で、賑やかに話していると、輝く海が見えた。
潮の香りがした。
海水浴場の前の駅で、海水浴に行く、家族連れやカップルが、
降りていった。ぼくらは、残念なことに、ここでは降りなかった。
クロウの意見で、海沿いの無人駅が目的地となったので。

無人駅は、あたり前だが人気が無く、
降りるのは、ぼくらだけ。
ぼくらは、県道を渡り、ガードレールを乗り越えて海岸に出た。
海岸は、岩場だった。

タミヤンが袋から船を出した。
そして、「クロウ、これ。」と言って、
映画の撮影風景の写真で良く見るガチンコを出した。
「ありがとう。」とクロウはうけとると、「ガチン、ガチン」と遊び出した。
そして、満足すると、
「いい? じゃぁ撮影を開始するよ。」と言って、周りを見た。
タミヤンが船を海に浮かべた。波にちゃぷちゃぷもまれる船。
マゴベーが三脚にセットしたカメラを構えた。
「撮影開始!」といって、クロウがガチンコを景気良く鳴らした。
マゴベーがカメラを回す。皆、息を止めて撮影を眺める。
「はい、カット。」
最初の船のシーンが終わった。

「次、船が沈むシーンね。まず、大きな石を探そう。」とクロウが言った。
石を使って船を揺らすのだ。しばらくして、
「クロウちゃん。いいの、あったぜ。」とヤジューがでっかい石を運んできた。
「よーし。この石を船の横に落として。
 カメラに姿が写らないように。」
 船の横に、でっかい石が落とされた。
 船は、水しぶきを浴び、お約束通りヤジュの体もびしょ濡れとなった。
 引き続き、岩場に船を突き刺して、座礁したシーンを撮られた。

海の景色をいくつか撮りだめした後、
「次は、海岸に上陸するシーンね。探検隊ぽくね。」
とクロウが言った。
副隊長のヤジューが先頭で、隊員A~Dが続いて、
隊員見習いの最後にくっついて岩場を歩いた。
ベン君は、撮影の様子を静かに見守っていた。
ぼくは、ベン君に「どうだった?」と聞いた。
「石炭掘りにでかける7人の小人のようだった。」とベン君は答えた。

撮影の後は、海水浴場に戻ろうとした。
しかし、駅で時刻表を見て、クロウが言った。
「げっ。後1時間、電車来ないぞ!」
「海水浴場まで、2kmぐらいだし、歩いた方が早いんじゃないか」
とヤジューが言った。
「えぇ!」とアイコとカオリが叫んだ。
「女子の荷物は持ってやるから」とクロウが言った。
「やった! よろしく。」とアイコがスポーツバックをクロウに渡した。
こうして、歩いて行くこととなった。

しかし、海水浴場は、なかなか遠かった。
途中で電車に追い抜かれるのを恨めしそうに横目で見て、
海水浴場にやっとたどり着いた。
ぼくらは海の家の更衣室で汗をかいた服を脱いで水着に着替えた。
裸足で、砂浜を駆け出しで、
ビーチバレーをやったり、泳いだり、水のかけ合いをしたりした。

ヤジューは、持ってきたラジカセに
僕の知らない洋楽のカセットを入れてガンガン流した。
洋楽もいいなぁ。何っていう曲か、後で教えてもらおうと思った。

沖では、旗を立てたブイがぷかぷかと浮いていた。
皆で食べた焼きソバが美味しかった。

とても楽しい撮影初日だった。


世界にスマイル ☆9☆ [世界にスマイル]

☆9☆
数日して、脚本ができあがった。
監督クロウは、それを熱心に読み、
一人、隊員を増やしたいなぁと言った。
「どうして?」とぼくは聞いた。
「ミッキーを出したいんだ。」
「え!」と驚くぼくに、クロウはお構いなく続けた。
「隊長だけ、女性というのも変だろう。
 隊員見習いということで、白雪姫と7人の小人の中のおとぼけ
見たいな感じで。」

「じゃぁ、セリフは不要ね。
おとぼけには、セリフは無いから。」とぼくは言った。
「あれ? そうだったっけ。
 おとぼけって、セリフ無かったんだっけ。」
とクロウはうろたえた。
「無いわよ。いいわ。その役やるわ。」
ぼくは、セリフの無い隊員見習い役を引き受けた。

その後、クロウや、細々したことが得意なクラス長マゴベーの意見で、
いくつかの修正を行い、脚本は決まった。

夏休みが始まり、いよいよ制作である。
ぼくは映画を製作する機材については、良く分からなかったし、
今も良く分からない。

ただ当時は、ビデオカメラは一般的ではなく、
業者から映画撮影用の8mmのカメラと
編集用の道具や映写機を借りる予約を、
マゴベーとクロウが纏めて来た。

カメラの調達に合わせて、
プラモデル好きの男子タミヤンが模型の船を作った。
(船は本格的な帆船だった。)
女子のカオリとユーコが、ダンボールや厚紙に色を塗って、
船の中の小道具や、洞窟のセットを作った。

撮影スケジュールを決める場で、クロウが言った。
「ロケの場所は、船の中は教室で、
無人島は、タキ川の川原で撮影する。
ということで考えてきたけど、予定を変更して、
初日は、海に行って撮影したい。どうだろう?」
皆は、唖然とした。
学校の側を流れるタキ川は、
結構大きな川で、草ぼうぼうの川原もあり、
撮影にはもってこいなのだ。

海までは、学校から電車で片道1時間以上かかるくらい遠い。
「何でわざわざ海に行くんだ?」というマゴベーの質問に、
クロウは答えた。
「海はこの映画の魂だ。この映画のリアリティは、
 海によって与えられる。
 何も、全てのシーンを海で撮るといっているわけではない。
 だけど、どうしても海が必要なシーンがあるんだ。
 海の波にもまれて浮かぶ船、
 隊員たちがゴツゴツした海岸に上陸する所なんか。」
ぼくは、クロウが撮りたいシーンが目に浮かんだ。
「撮影が終わったら、海で遊べるしね。」とぼくは相槌を打った。
「面白そう!皆で海に行こうよ。」とアイコが言った。
 こうして、海へ行くことになった。

「そうそう、服装は、川口探検隊ぽい青い服でね。
 青いつなぎを持っている人は青いつなぎなんかいいね。
 水着も忘れずに。」とクロウが言うと、
「エッチ!」とアイコが言った。


世界にスマイル ☆8☆ [世界にスマイル]

☆8☆
放課後、ベン君とぼくは、教室で脚本を書くこととなった。
クロウと、他の男の子たちは、映画の機材を借りる手続きとか、
ロケ地探しとかで、とっとと教室から出ていった。
ぼくとベン君が教室に残された。
ふたりだけだと、少し緊張する。

気まずそうに、ノートを鉛筆でコツコツたたきながら、ベン君が言った。
「セリフをどんなトーンにしていいのか分からないんだ。」
「ぼくの個人的な好みをいわせてもらうと、コメディ・タッチにしたいな。」
「ミッキーさんは、コメディが好きなんですよね。」とベン君。
「うん。自分が笑うのも、人が笑っているところを見るのも好きなんだ。
 この作品の怖い所があるけど、笑いとも相性がいいと思う。
 それから、ぼくのことはミッキーでいいよ。」
 と言ってぼくはニコッとした。

「コメディにすることは了解した。だけど、どんな風にすると
 コメディになるのだろう?」とベン君
「笑える状況や、セリフが大事じゃないかな。
 例えば、こんなのはどう。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
バウンティ号の船長の部屋。
副隊長(ヤジュー): 
 もぉ、船には水の残りが少ないです。
 隊員達には、水を一人一日コップ1杯に規制しています。
 隊長も、水の使用を減らして頂けないでしょうか。

隊長(アイコ):
 私は美容の為に、洗顔と頭を洗うのは、止めないわ。   
 あぁ、喉がイガイガするわ。
 (机の上のコップの水を飲んで)
 ガラガラ、ペッ。(と窓からはく。)

逆上した副隊長(ヤジュー):
 うぉぉ、ふざけているのかぁ?
 オレは、喉がカラカラなんだぁ!
 この苦しみ、わかるか、わかるか。

 副隊長は、船の窓から隊長を突き飛ばす。
 海に落ちていく隊長。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「確かに可笑しい。それにアイコとヤジューの感じするね。
だけど、厳しいようだけど二つの点で納得がいかない。」
とベン君は言った。

「まず、副隊長が衝動的に、船長を海に放り出すのではなく、
 隊員の総意による反乱という形をとりたい。
 ここは作品の肝だから譲れない。
 そして、隊長は、島まで流れ着くので、
 ボートか、浮き輪に乗せた形で、
 船から追い出されるべきではと思う。」
「ベン君の言う通りだわ。」とぼくは答えた。

 そして、しばらく考えてから、ぼくは言った。
「この会話を隊員達が見ていて、
 副隊長、良くやりました。俺たちも腹にすねかえていたんです。
 みたいなことを言えば、どうかな?」
「いいアイデアだね。浮き輪の問題は?」

「うん。隊員の一人が、隊長さようなら、と言って、
 海に浮き輪を投げたら、どう?」
「さようならと、浮き輪を投げることは論理的には反対だけど、
 気持ち的には分かる気がする。
 こういの何とかっていうよね。」
「はなむけ。花婿ではなく。」とぼくは言った。
「そうだ、はなむけだ。鼻クソでもなく。」
と真面目な顔でベン君は言った。
そして、二人で笑った。

 こうして、先ほどのシーケンスに隊員Aと隊員B
のリアクションが付け加えられた。

「隊員って、ストーリーを展開するのに、とても便利だわ」
 とぼくが、魔法の杖を見つけたように言った。
「ミッキー、隊員にも愛情を込めよう。」とベン君が言った。
 ぼくは、静かにうなづいた。

こんな調子で、ベン君とぼくは、まるで、
映画『アマデウス』でモーツァルトとサリエリが協力して、
レクイエムを書いていった様に、ホラー・コメディを書き進めていった。


世界にスマイル ☆7☆ [世界にスマイル]

☆7☆
ぼくは、他の女子と一緒に、机を寄せて弁当を食べていた。
「ベン君の脚本、ちょっとひどいよね。」
「楽しくないし、笑えないし、怖すぎ」
「どのみち、部活忙しいから、関係ないわ。」
ベン君の書いてきた脚本は、ひどく批判されていた。
余りに、男っぽい作品の内容に、
男子だけで作ればぁー、という感じだった。
「あぁ、せっかく主役やりたかのになぁ」とアイコは言った。
「アイコができる役、まったくないよね」とぼくは同情した。

ところが、
放課後に、クロウが大またでアイコの所に来て言った。
「アイコ、山口隊長の役やって!お願い。」
アイコは、目を丸くした。
クロウは、拝むように手を合わせていた。
「でも、これ、男の役なんじゃないの?」
やっとのことで、アイコは言った。

「いや、これは、絶対に女がやった方がいい役なんだ。」
「え、どうして?」
「戦いで、最後に勝ち残るのは、女性なんだ。」
分かったようで分からない理屈だった。

「で、どうして、私なの?」
「君は、最後に勝ち残る女性だから。」
「私は、最後まで残れるの?」
とアイコはクロウを見つめて聞き返す。
「その通り。
それに、君の飛び抜けた演技力が必要なんだ。」
とクロウは真剣な目でアイコを見つめる。

「仕方が無いわ。やってあげる。」
と、アイコは、ちょっと嬉しそうに答えた。
こうして、あっけなく主役が決まった。

副隊長役は、ヤジュウが自ら立候補した。
ヤジュウは、松田優作の熱烈なファンで、
しょっちゅう物真似をしている、ちょっと切れた男子だった。
ヤジュウは、山口隊長と戦って死ぬ場面を
最高のものにして見せる!と言った。

ぼくは、ヤジュウが、怪物と化した山口隊長役で、
アイコが、副隊長役の方がいいのではないかとも思ったが、
決まったことは仕方が無い。

数日が経った。
ベン君の脚本が順調に進んでいるであろうと思っていた頃、
クロウが、ベン君と一緒にぼくの所にやってきた。
「やっぱり、ミッキー、頼む。
脚本、手貸してくれない?」
ベン君は、ノートをぼくに見せて言った。
「セリフが、なかなか書けないんです。」
「ミッキーは、こういうのは得意だろう。」とクロウが言った。
ぼくはやれやれという感じで「O.K.」と答えた。
アイコをスカウトする時に比べて、ぶっきらぼうだなぁと思いながら。


世界にスマイル ☆6☆ [世界にスマイル]

☆6☆
翌日早速、ベン君がノートに、
大体の映画のあらすじを書いてきた。
ノートのまわりには、人だかりができて、
先を争って、ノートの内容を読んだ。
こんな内容が書かれていた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   山口探検隊、恐怖の宝島探検
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

舞台: 船の中(教室)
    無人島(川原で代用)
    洞窟(セット)

あらすじ:
 山口探検隊は、バウンティ号という船に乗り、
 古地図を頼りに、ムー大陸の宝物があるという
 南の島々を探している。
 食料と水が少ないのに、山口隊長は自分ばかり贅沢な食事をし、
 隊員の反感を買う。
 副隊長以下がついに反乱を起こし、
 隊長に浮き輪をつけて、海に放り出す。

 隊員を乗せた船は、やがて無人島にたどり着く。
 隊員たちは島を探検する。
 島の特徴は、古地図と一致する。
 喜ぶ隊員たちは、この島に宝物があると喜ぶ。
 しかし、喜びもつかの間、船は何者かに沈められる。

 残された痕跡から、島には、何か怪物がいるようだ。

 恐怖に怯える隊員たち。
 一人また一人と隊員が、何者かに殺されていく。
 そして、とうとう、副隊長一人となった。

 一人となった副隊長は、
 ついに宝物が隠されている洞窟を見つける。

 洞窟に入ると、そこに怪物がいる。
 そこで、船を沈め、隊員達を殺した怪物の正体が明らかとなる。
 怪物とは先に島に流れ着いた山口隊長だったのだ。

 怪物となった山口隊長と副隊長の熾烈なバトルが繰り広げられる。
 戦いに勝ったのは、山口隊長だった。
 副隊長を倒した山口隊長は、一人洞窟の奥に消えていく。

 ロッキーのテーマがかかり、
 ナレーションが流れる。
 ~現代社会にとり残された、神秘の南の島。
 そこには、今も山口隊長が生き残っているという。~

 完
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

このストーリを読んで、皆は、ちよっと困惑していた。
「川口探検隊とちょっと違う。」とカオリは言った。
「私の出番が無いわ。。」とアイコが言った。
しかし、ぼくには面白かった。
なんか、ワクワクする恐怖感があっていいと思った。

クロウが言った。
「これは、『バウンティ号の反乱』だね。」
「その通り。
 バウンティ号の反乱を下敷きにしたんです。
 映画観たことあります?」
「観たことは無いんだけど、
 探検隊の乗る船の名前がバウンティ号だから分かった。
 僕の好きな『エイリアン』が、
 その映画を題材にしたらしいと聞いたことがあるんだ。」
「僕は『エイリアン』は観た事が無いんですが、
 『2001年宇宙の旅』も影響を受けていると思います。」
とベン君が答える。

「おぉ2001年! この脚本、最高だ!」とクロウが言う。

皆は、ポカーンとしていた。
しかし、クロウは、この脚本をSF映画と混同し、
映画化に乗り気になっていることは
確かだった。


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